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医療的ケアの力を借りてご機嫌に生きる、重症心身障害児の娘の闘病記録や日々の暮らし、医療や福祉など母の頭の中のあれこれを書くブログ

気管切開を決断するまで①【閉塞性無呼吸と中枢性無呼吸へのNPPV療法】

めいは2017年の6月に声門閉鎖手術を受け気管切開をしました。

現在は日中はカニューレフリー、夜間はカニューレを挿入し人工呼吸器を使用する生活を送っています。

 

 気管切開、声門閉鎖、カニューレフリーについてはこちらの記事をどうぞ↓

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 永久気管孔、カニューレフリーの生活実践例はこちらの記事をどうぞ↓

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 今回は、気管切開に至るまでの経過と親の気持ちの変化、実際に行った治療などの記録を書いていきます。

 

気管切開を決断するまで

2016年秋 閉塞性無呼吸が悪化

重度の気管支軟化症での呼吸停止経験があり、その後も軽度の喉頭軟化症や呼吸時の閉塞音が時折はあるものの、経過観察を続け何年もそれなりに落ち着いて過ごしてきためいでしたが、2016年の秋頃に夜間の閉塞性無呼吸の症状が悪化し始めました。

寝ているときに突然ひどい閉塞音と共に苦しみだすことがあり、夜中に飛び起きる日が続きました。

 

入院し検査したところ、上気道にびらん状の余剰粘膜があることと、舌根沈下がひどくなっていることがわかり、夜間に閉塞性の無呼吸を起こしているとの診断を受け、夜間のみ経鼻エアウェイを使用し始めました。

(エアウェイとは、文字通り鼻から太めの管を喉元まで入れる空気の通り道を確保するもので、舌根沈下等に有効。普通の人のいびき軽減や睡眠時無呼吸の軽減に使われたりもするようです。入れると痰や鼻水が増えたり、本人が不快がって使えない子も多いそうですが、めいの場合は大丈夫でした。)

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楽しいハロウィン。エアウェイを入れると楽そうだった。

この頃にサチュレーションモニター(心拍や、血中の酸素濃度を指に巻いたセンサーではかる機械。以下モニター)を使いはじめ、自宅で経過観察を続けました。

エアウェイ作戦がうまくいき、しばらくは夜もよく眠れ、モニターの血中酸素濃度(以下Spo2)の数値が下がることもなかったのですが、年が明けた頃からエアウェイを入れていても夜間にSpo2低下アラームが鳴るようになり、また入院することになりました。

それまでと変わっていたことは、エアウェイを入れてからは本人が苦しそうにしたり、閉塞呼吸の音なども聞こえないのに静かにSpo2の数値が下がることでした。

 

2017年1月 再入院 NPPV開始

NPPV (Noninvasive Positive Pressure
Ventilation: Ventilation:非侵襲的陽圧換気 非侵襲的陽圧換気) は、侵襲的気道 )
確保(気管挿管)なしに行う人工呼吸法です。

引用元: NPPVってなんだろう?

https://hosp.komatsu.ishikawa.jp/local/pdf/syabondama_05.pdf

NPPVはマスクタイプの人工呼吸器を使う方法です。

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夜中にずれて外れてしまい、しょっちゅう飛び起きて付け直した。

鼻を覆うタイプと、口と鼻を覆うタイプがあり、めいは鼻マスクを使い始めました。

1か月ほど入院し、退院。在宅での人工呼吸管理が始まったのですが、また、日がたつにつれてSpo2が頻回に低下するようになっていきました。

日中の様子も元気がなく、それまで昼寝などほとんどしなかっためいなのに、起きていられない日が少しずつ増えていきました。

ただの閉塞性無呼吸なのか?何かがおかしい、と、もやもやしていました。

 

3月 再々入院

1か月ほど在宅で過ごしましたが全身状態が少しずつ悪くなり、また入院することになりました。

日中起きていられない、顔色が悪い、おしっこや便が出ない、低体温、徐脈。

これまで見たことのない様子が続き、絶対におかしい、との訴えに再度詳細な睡眠検査が行われた結果、閉塞性の無呼吸と併せて中枢性の無呼吸が起こっている事がわかりました。

 

中枢性無呼吸は脳から呼吸の指令がうまくいかず呼吸を止めてしまう無呼吸で、吸おうとしているのに吸えない閉塞性無呼吸と違い、静かに呼吸を止めるそうで、年明けから苦しむ様子もまったくなくSpo2が下がっていたのはそのせいだということがやっとわかったのでした。

 

それから、呼吸器の設定やマスクのつけ方の工夫でなんとかしてあげたい、というMEさん達(臨床工学技士さん)を中心に、長期間試行錯誤してくださる日々が続きました。

 

NPPV試行錯誤の数々

①鼻マスク+呼吸器設定の工夫

元々嘔吐しやすいタイプのめい。嘔吐した時の安全性を考え、鼻マスクが望ましいということでまずは鼻マスクのままで呼吸器設定の工夫で色々試してみるものの、閉塞性無呼吸の時はうまくいくのですが、中枢性無呼吸が起こると換気ができず、その分圧を上げようとすると換気量よりも口からのリーク量が増えてしまいSpo2低下はカバーできず、これはなし。

 

②口鼻マスク

口からのリークを何とかするため口鼻マスクに切り替えました。鼻マスクではうまくいかないため仕方がない、と言われましたが嘔吐したらどうしたらいいのか、吐しゃ物を誤嚥することが恐ろしかったです。

 

口と鼻を覆い圧をかける口鼻マスクは嘔吐時吐瀉物を気管に押し込んでしまいます。

吸引が必要になるたびにマスクを外さなければならないこともひっかかっていました。

 

モニターのSpo2、二酸化炭素の溜まりを見る検査の数値的には一番結果がよかったものの、鼻マスクよりもめいが外してしまうことが多くその度に付け直しに私が起きなければならず、マスクのフィッティング的に難あり。

そしてやはり嘔吐時のリスクも高く在宅生活を続けるにあたり現実的ではないという判断で、これも、なし。

このあたりでちらりと気管切開の話が出始めました。

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一度外泊してみましたがびっくりする頻度で夜中に外れやすかった。

 

③鼻マスク+リードクッキングペーパー

口鼻マスクがだめならばということで、鼻マスクに立ち返り、口からのリークをなんとかする作戦に出たMEさん。

鼻マスクを使用し、口元をリードクッキングペーパーで覆いリークを防ぐ方法が提案された。ちなみにこれ、ちゃんと論文発表などもされた方法で、一定の効果実証済みなのだそうです。ポイントはリードクッキングペーパー。あの強度じゃなきゃダメだそうです。

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こんな感じで、コッテコテに固定する。

確かに効果はありました。けれど懸念は多く、

 

  • 装着が難しく手間がかかる(こう止めれば漏れない、とい方法を見つけてくださったものの、再現性が低く、できない看護師さんが多数、私もなんとかできるようになったが、装着が終わるころにはぐったり)
  • 口鼻マスクの外れやすいという点カバーしているが、口をふさいでいる点で嘔吐時の誤嚥のリスクという点は同じ
  • 本人がかなり苦痛そうで、クッキングペーパーがよだれでびしゃびしゃになる
  • 数値的には改善されていたものの本人が熟睡できず、睡眠の質も日中の覚醒度などの全身状態もあまりよくならなかった

 

…などなど。

この頃になると、気管切開推進論とNPPV続行論が、病院スタッフさん達の中でも意見が割れはじめていました。

避けられるならば気管切開は避けてあげるべきだ、いや、今の方法を毎日家族がつづけられるのか?気管切開をしてあげた方がいい、と、どちらの意見もめい本人と、家族のための意見で、スタッフさん達が真摯に向き合ってくださっていることが伝わってくるとともに、意見が割れていることでどちらが正解なのかがわからず、めいのためにどうしたらよいのかと悩み続ける苦しい日々でした。

 

そして、あんなによく笑っていためいが笑顔もなく顔色も悪く寝てばかりいる姿を毎日毎日見続け、私の中でもう気管切開した方がいいんじゃないかという思いが日に日に大きくなっていきました。

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入院が長期になり、病院併設の養護学校に転校していました。明るく楽しい先生達の存在が、光でした。春よ来いって毎日祈っていました。