ぼくらはみんな生きていく

医療的ケアの力を借りてご機嫌に生きる、重症心身障害児の娘の闘病記録や日々の暮らし、医療や福祉など母の頭の中のあれこれを書くブログ

昔の話⑦ 2007.1 急変 

旧ブログより抜粋して昔の話をします。はじめから読む方はこちらから↓ 

megumeimusic.hatenablog.com

 前回の続きです。前回記事はこちら↓

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 急変

またあしたね、とめいと別れたその日の深夜一時。

いつも通り布団に入りウトウトしかけた頃、私の携帯が鳴った。

慌ててとびおきると、めいの入院している病院からの電話だった。


「めいちゃんが急変しました。すぐに病院に来てください。」

 

一瞬で血の気が引いた。

旦那を起こし、2人ですぐ病院へ向かった。病院までは車で20分。

病院につくまで私も旦那も一言も喋らなかった。頭によぎった考えを口に出すのが怖かった。

 

到着するなり顔なじみの看護師さんが血相変えて駆け寄ってきて、めいのもとへ案内された。

 

数時間前までGCUにいたはずのめいはNICUに移され、昼間の様子とは別人のようだった。

 呼吸器を挿管され、目は上転し痙攣が止まらない。

どれだけ呼んでも、体に触れても、一切反応しない。

 

その場で先生からの説明があった。

突然呼吸トラブルが起こり、そのまま心臓も呼吸も止まってしまったという。

10分間、戻らなかった、と。

 

何も言葉が出なかった。涙すら、出なかった。

 

一瞬、先生を責める言葉が飛び出しそうにもなったけれど、パジャマ姿に白衣を羽織りボサボサ頭の先生を見たら、当直でもないのに、夜中なのに、すぐに駆けつけてくれた事がわかって、何も言えなかった。

 

めいはこちらを見ることもなく声も聞こえているのかわからない。

目は開いていたけれど意識があるのかもわからない。

どうして、こんなことになったのか、わからない。

 

手を握り、体をさすりながら

「お願いやから頑張って、頑張れ、頑張れ…」

何回も同じ言葉を繰り返した。

 

旦那は何も言わなかった。きっと言えなかったんだろう。

 

そのまま朝までめいの側にいた。

「ひとまずは落ち着いたから帰って休んで…」

と看護師さんに促されて一旦自宅に戻ることになった。

 

旦那はそのまま一睡もせずに会社に行き、私も仮眠を取ろうとしたけれど結局一睡もできなかった。

もうお家に帰れる日も見えて来たと思っていたのに、どうしてこんなことになるんだ、と同じ事ばかり考えていた。

 

眠れぬまま、また日中の面会時間、NICUに向かった。

先生からめいの呼吸トラブルの原因は気管支軟化症だったことがわかったと告げられた。

 

本来硬いはずの気管が柔らかくなり、特に泣いたりすると気管がへしゃげ、息が吸えなくなるのだという。めいの場合はそれが気管支で起きた。

こんなことになる前に呼吸の異常がいくつかあったのに検査に踏み切って異常の原因を発見できなかったことを、何度も先生に謝られた。

 

この時はめいがしんどい思いはさせたけど、なんとか戻って来てくれたなら、助かったなら、と思っていた。

 

安静をはかるために、めいはその日から薬で眠らされたままになった。寝ている顔には生気などまったく感じられなかった。毎日毎日、声をかけ続けても触れても、やっぱり反応はなかった。

 

薬を切れるくらいに体調が落ち着き、意識が戻ればまた笑顔が見れるだろうか。

10分も心肺停止だったのに、脳へのダメージはなかったのだろうか。

本当に、元のめいに、戻れるのだろうか。

口に出すのがこわくて、聞けなかった。

 

そのまま2週間が過ぎた頃、先生から話がある、と声をかけられた。

心肺停止直後は確認できなかった脳へのダメージが、はっきりしてきたと。

以前のめいには戻らないと。

 

先生の目にはうっすら涙が浮かんでいて声は震えていた。

この時にも何度も、何度も謝られた。

 

低酸素性虚血性脳症という診断だった。

長く呼吸と心臓が止まったために脳に重大なダメージが残ったと。

どこかで覚悟をしていたやけに冷静な自分と、先生や看護師さんを責めたい、その場で大声で泣き出したい自分が頭の中でぐるぐると、回っていて、激しい吐き気とめまいがした。だけど。

 

目の前にいるのはこれまでお世話になった、一緒に乗り越えてきてくれた、ずっと支えてくれた、めいも私も大好きな先生と、看護師さん達。

結局その場で泣く事も責める事も、できなかった。

 

その日の面会を終えロッカールームに戻って一人になった時、2週間出なかった涙が、一気に溢れて止まらなくなった。一人で、その場にしゃがんで声を殺して泣いた。

 

どうしてめいばかりがこんな目にあわなきゃならないんだ。

めいだって、家族だって、ずっとずっと頑張ってきたはずなのに。

 

神様なんていない。くそったれ。

 

やり場のない怒りと悲しみと苦しみをどこにもぶつければいいのかわからず、心は限界でボロボロだった。

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もう二度と笑いかけてくれないのかと思うと胸が押しつぶされそうだった。